次の例は、非常に単純なバリデータの書き方を説明するものです。 ここで定義している検証規則は非常に単純で、入力値が浮動小数点値かどうかのみを調べています。

class MyValid_Float extends Zend_Validate_Abstract
{
    const FLOAT = 'float';

    protected $_messageTemplates = array(
        self::FLOAT => "'%value%' は浮動小数点値ではありません"
    );

    public function isValid($value)
    {
        $this->_setValue($value);

        if (!is_float($value)) {
            $this->_error(self::FLOAT);
            return false;
        }

        return true;
    }
}

このクラス内には、検証が失敗したときのメッセージ用のテンプレートがひとつ定義されており、 その中では組み込みのマジックパラメータ %value% を使用しています。 _setValue() のコールによって、検証した値をこのメッセージに自動的に格納します。 これにより、検証に失敗したときに、この値をメッセージに含められるようになります。 _error() のコールによって、検証に失敗した原因を取得します。

次の例は、複数の検証規則を組み合わせた複雑なものとなります。 ここでは、まず入力値が数値であること、そして指定した最小値と最大値の間にあることを調べます。 以下のいずれかが発生したときに、検証は失敗します。

これらの原因に応じて、クラス内でメッセージへの変換が行われます。

class MyValid_NumericBetween extends Zend_Validate_Abstract
{
    const MSG_NUMERIC = 'msgNumeric';
    const MSG_MINIMUM = 'msgMinimum';
    const MSG_MAXIMUM = 'msgMaximum';

    public $minimum = 0;
    public $maximum = 100;

    protected $_messageVariables = array(
        'min' => 'minimum',
        'max' => 'maximum'
    );

    protected $_messageTemplates = array(
        self::MSG_NUMERIC => "'%value%' は数値ではありません",
        self::MSG_MINIMUM => "'%value%' は '%min%' 以上でなければなりません",
        self::MSG_MAXIMUM => "'%value%' は '%max%' 以下でなければなりません"
    );

    public function isValid($value)
    {
        $this->_setValue($value);

        if (!is_numeric($value)) {
            $this->_error(self::MSG_NUMERIC);
            return false;
        }

        if ($value < $this->minimum) {
            $this->_error(self::MSG_MINIMUM);
            return false;
        }

        if ($value > $this->maximum) {
            $this->_error(self::MSG_MAXIMUM);
            return false;
        }

        return true;
    }
}

パブリックプロパティ $minimum および $maximum でそれぞれ最小値と最大値を定義し、値がこの間にあった場合に検証が成功したことにしています。 このクラスではまた、それぞれのパブリックプロパティに対応するふたつのメッセージ変数を定義しています。 そしてメッセージテンプレートの中で value と同様に使えるマジックパラメータとして min および max も用意しています。

isValid() での妥当性チェックのいずれかが失敗すると、 適切なメッセージを準備して即時に FALSE を返すことに注意しましょう。 つまり、これらの検証は、その並び順に依存します。 どれかひとつのチェックが失敗すると、それ以降の検証規則を確認する必要はなくなるからです。 しかし、時にはこのような処理が不要な場合もあります。 次の例は、個々の検証規則を独立させたクラスを書く方法を示すものです。 このバリデーションオブジェクトは、検証に失敗したときに複数の理由を返すことがあります。

パスワードの強度を確認するバリデーションクラスを書くことを考えてみましょう。 ユーザに対して、安全なユーザアカウントを発行するために ある条件を満たしたパスワードを設定してもらう際に使用するものです。 パスワードの条件としては、次のようなものを前提とします。

この検証規則を実装したクラスは、次のようになります。

class MyValid_PasswordStrength extends Zend_Validate_Abstract
{
    const LENGTH = 'length';
    const UPPER  = 'upper';
    const LOWER  = 'lower';
    const DIGIT  = 'digit';

    protected $_messageTemplates = array(
        self::LENGTH => "'%value%' は少なくとも 8 文字以上でなければなりません",
        self::UPPER  => "'%value%' には最低ひとつの大文字が必要です",
        self::LOWER  => "'%value%' には最低ひとつの小文字が必要です",
        self::DIGIT  => "'%value%' には最低ひとつの数字が必要です"
    );

    public function isValid($value)
    {
        $this->_setValue($value);

        $isValid = true;

        if (strlen($value) < 8) {
            $this->_error(self::LENGTH);
            $isValid = false;
        }

        if (!preg_match('/[A-Z]/', $value)) {
            $this->_error(self::UPPER);
            $isValid = false;
        }

        if (!preg_match('/[a-z]/', $value)) {
            $this->_error(self::LOWER);
            $isValid = false;
        }

        if (!preg_match('/\d/', $value)) {
            $this->_error(self::DIGIT);
            $isValid = false;
        }

        return $isValid;
    }
}

isValid() では四つのチェックを行っていますが、 チェックに失敗してもその場では FALSE を返していないことに注目しましょう。 これにより、入力されたパスワードが満たしていない条件を すべて 示すことができるようになります。たとえば、パスワードとして入力された値が "#$%" だったとすると、isValid() は四つのメッセージをすべて作成し、後で getMessages() をコールした際にすべて取得できるようになります。